今を失いて治めざれば
今を失いて治めざれば、必ず錮疾(こしつ)とならん
(班固)錮疾とは長く直らない病気のことで、優良と思われる企業でも、人との関係でも病気にたとえられるような事態は必ず起こるものだ。その手当の時機を逸すれば、大きな犠牲を要することになりかねない
「漢書」より
人事部門で、福利厚生を担当していた主任時代(20代後半)のことです。
独身寮の寮生がある新興宗教に入信し、仏壇まで新たに購入して寮室で、毎日お経を読み出しました。
寮は2人部屋でしたので、同室のものが線香やローソクの臭いと、加えて夜中のお経を嫌がり部屋替えを申し出てきました。
隣室からも、「深夜のお経が迷惑」との苦情が寄せられましたし、このまま手をこまねいていては、寮内で折伏が始まって若い寮生は何も分からないために、引き込まれていくことを心配する声が高まってきました。
「何とか、寮内でのお経などを止めさせよう」ということになりました、上司からは、信教の自由との絡みがあり、どのように進めるかは任せるがトラブルのないように!との難しい注文でした。
1週間ぐらい悩んだ末に、その宗教の地区をまとめている支部長の所に直談判に行くこととしました。
① 毎週研修会が夜に行われるが、寮の門限をいつも破って帰ってくること。
② 夜中にお経を唱えるので寮生が迷惑していること。
③ ローソクや線香は、火災予防の面から認められない
等々の理由をまとめました。
支部長との協議は険悪なものでした、「大企業が信仰の自由を阻害しているとマスコミの話題になってもよいのか、商品ボイコットを全国展開してよいのか」など下手に対応を誤ると大問題になると思われる脅しがありました。
背中に流れる冷や汗を感じながら平静を装って、「宗教から脱会せよと言っているのではない、ルールを守るように支部長にお願いしているのである、団体・社会生活を送る上で、支部長としてルールを守るように指導するのは当然のことであろう、もしか次にも守らないようであれば、宗教か寮生活かいずれかを本人に選ばせる」と言って協議を終えました。
次の週にもやはり門限を破って帰寮しましたので、本人に約束どおり宗教か寮生活かを選ばせ、最終的に本人は脱会の道を選びました。
当然、予想された通りその宗教からはクレームが来ましたが、こちらも不退転の気持ちですから引くわけに行きません。
押し問答の末に「正しいことの指導が出来ない宗教であることを、教区長のところに談判に行く」と答えましたところ、本人が選んだのであれば仕方ないとなりました。
対処の時機を逸せずに、正面突破したことでその後は寮での宗教問題は起きませんでした。

